ギャラさん映画散歩

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東京物語(小津安二郎監督1953年作品)

                   やっぱりあんたは、ええ人じゃ、正直で。
          妙なもんじゃ、自分が育てた子よりも
            他人のあんたが、わしらにようしてくれて、ありがと。
                    (「東京物語」から周吉の言葉)
あらすじ
尾道に住む定年生活の平山周吉(笠智衆)と妻とみ(東山千栄子)は、20年ぶりに息子や娘が暮らしている東京へ上京した。
長男幸一(山村聡)は下町で、医院の医師をしていて、子どもが2人いる。長女志げ(杉村春子)は、金子庫造(中村伸郎)と結婚して、美容院を経営している。
次男昌二は、8年前に戦死したが、昌二の妻紀子(原節子)は、未亡人として都内で一人暮らしをしていた。
三男敬三(大阪志郎)は、大阪に住むサラリーマン。次女京子(香川京子)は周吉夫婦と同居で尾道で暮らしている。
周吉夫婦は、上京後はまず幸一宅に寄る。幸一の妻文子(三宅邦子)や孫達が迎えるが、孫達は久しぶりの祖父母には馴染みがないのかそっけない。
幸一と孫は、周吉達と一緒に東京案内をしようと計画していたが、急患が来て行けなくなってしまう。その後、周吉達は志げ宅に行くが、志げも予定があって、どこへも連れてゆけない状態だった。
そのため、紀子に対して、どこか案内してほしいと依頼する。紀子は快く引き受ける。紀子は翌日に都内を案内してから自宅アパートに周吉達を連れてくる。そのアパートには、亡き昌二の写真が飾ってあった
長女の志げは、幸一と相談して、周吉達を2-3日熱海温泉に行かせることにした。ところがシーズン中の熱海は混雑し、賑やか過ぎて、周吉達は落ち着かず1日で戻ってしまう。
その後は行き場がなくなった周吉は、昔の知人宅を訪ね、とみは紀子宅へ行くことになる。とみは紀子に親切にされ一夜を過ごすが、周吉は知人と飲み酔って、警察に保護され志げ宅に戻される。
翌日、2人は、幸一、志げ、紀子に見送られ、尾道に帰郷するが、帰郷後にとみは、脳溢血で危篤になる。幸一や志げが駆けつけるが、とみは亡くなってしまう。
とみの葬儀が済み、幸一、志げ、敬三はそそくさと帰ってしまう。その後、京子は紀子に向かってこう言う。
「ずいぶん皆勝手ね。言いたいことだけ言ってさっさと帰る。お母さんの形見がほしいとか、親子ってそんなもんじゃない。いやね、世の中ってすると紀子は「子どもって、大きくなるとだんだん親から離れるものよ」と言って別れる。
周吉は紀子に向かって「あの晩が、一番うれしかったと言っていた。やはり、このままではいかんよ。昌二のことは忘れていい、あんたみたいな人ならいい人がみつかる」それに対して紀子は「お父様が言うほど私いい人ではありません。私はずるいんです。いつも昌二さんのことは考えていないんです。忘れる日が多いのです。私はこのままではいられない一日一日と過ぎるのが寂しいのです」と答える。
周吉は「いいんじゃよ。やっぱりあんはええ人じゃ。正直で。妙なもんじゃ、自分が育てたこどもより他人のあんたが、わしらにようしてくれて、ありがと。と言って静かに笑う。
すると紀子は、我慢の緊張がほどけて思いっきり泣き崩れる。
 
感想など 
1 孫たちと祖父母(孫達のそっけなさ)。両親と幸一達それぞれが異なる感じ方でい ることがよく分ります。
 幸一や志げの、両親が東京へ出て来て帰ったことの感想は、「子供達に会えた   し、熱海にも行ったし、当分東京の話で持ちきりだろう」などと述べていました。
 しかし、周吉に言わせると「孫の方が可愛いという人もいるが、わしらは子どもの  方がいい。だが大きくなると変わる。幸一や志げも昔の方が優しかった。だが、い い方じゃ、欲いえば切りがないが、わしら幸せな方じゃ」と不満を述べていました。
 
2 亡くなった息子の嫁の紀子と両親の温かい人間関係には感動しました。8年間ず っと死んだ夫の写真と共に暮らし、義父や義母に対する誠意、義兄、義姉に対す  る誠心誠意の人間関係には心を打たれます。
 最後に義父と交わす、正直な気持ち。それを受け止める義父の言葉の優しさ。そ してその心遣いに思いっきり泣く姿は実に感動的で美しく感じました。
 
3 小津監督自身はこの映画で「親と子の成長を通じて、日本の家族制度がどう崩  壊するかを描きたかった」と述べています。
 「兄弟は他人の始まり」という言葉もあります。まして核家族の時代なので、親子の 繋がりは希薄になりますね。
 
4 映画として感動的でした。ただ、「優しさだけがすべてか」「このままでいいのか。」 「やむを得ないのか。」「どうすればいいのか。」「自分自身で考えてみよう」と言わ  れてもなかなか難しい問題ですね
 家族の別れは、必然的なことでしょう。それを承知のうえで、克服して生きることが 大切なことなんでしょうね。
 
ギャラリー
 
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馴染みのない孫に話しかけても逃げる  亡き次男の嫁が親切に東京案内をするイメージ 3   イメージ 4
   次男の遺影を懐かしむ両親      熱海温泉で景色を眺める
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 次男の嫁の親切を喜ぶ母親       紀子と義父の感動的な会話