ギャラさん映画散歩

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スティング(ジョージ・ロイ・ヒル監督1973年作品)

   イカサマ師が市民と同じじゃしまらねえ。やりがいはある。」
 
                                (「スティング」からゴンドルフの言葉 )
 
あらすじ
19369月。米国シカゴ近郊のジョリット。ナンバーズ賭博場で、その日の上納金(11千ドル)を紐育の元締めまで運ぶ男が、途中の道路で狂言詐欺に遭い、巻き上げられてしまう。首謀者はルーサー(ロバート・アール・ジョーンズ)フッカー(ロバート・レッドフォード)だった。ルーサーは、これを最後に堅気になるつもりだった。それを知った紐育の元締めロネガン(ロバート・ショウ)は、怒ってルーサー達に報復しろと部下に命じた。

 

 まず、ロネガンは部下の殺し屋を使いルーサーを殺害した。そのため、フッカーは、ルーサーの親友ゴンドルフ(ポール・ニューマン)を訪ね、仇討ちの協力を頼む。ゴンドルフは、バーや売春宿を営む女性ビリー(アイリーン・ブレナン)に匿われていた。ゴンドルフは早速承知して仲間からロネガンの身辺情報を得る。ロネガンはポーカーと競馬に目がない男だった。そこでポーカー賭博をやる列車でインチキ賭博の対戦をすることにした。

 

 ゴンドルフは、それから仲間に私設場外馬券売り場を作らせた。売り場従業員は警察やロネガンに反感を持つ連中が集めた。そしてゴンドルフとフッカーは、ポーカー賭博を行っている列車に乗った。二人ともロネガンとは初対面だ。賭博場所には、ゴンドルフが行きポーカーをする。賭け金は段々と跳ね上がり、15千ドルになった。お互いがイカサマをやり合いフッカーが勝った。そしてその賭け金を受領に行くフッカーは、私設馬券売り場を乗っ取ると200万ドルになるとロネガンを騙し、裏切ってロネガンに協力したいと芝居を打つ。

 

 競馬好きのロネガンは、興味を示したが直ぐには信用しない。そこでフッカーは3000ドル渡して試させる。ロネガンは用心棒と共に私設馬券場へ行き、ゴンドルフと再会する。馬券を試したロネガンは当てて帰る。それは仕組まれた芝居だった。そしてロネガンに会ったフッカーは「相棒に電信局長がいてレースから23分遅らせ電信するので結果は分かっている。その情報を知らせてくれるから外れることはない」と嘘で種明かしする。

 

 ロネガンを信用させるためフッカーはニセの電信局長に会わせる。そしてとりあえずのレースに参加させるが、発走後で買えないと断り、ロネガンをやきもきさせ明日50万ドルぶち込む決心をさせる。一方、FBIがゴンドルフを極秘捜査で逮捕しようとやって来た。とりあえずスナイダー刑事(チャールズ・ダーニング)を使いフッカーを逮捕してゴンドルフが仕事をする日時を教えろと迫る。FBIは、教えるか刑務所行きか二者択一をフッカーに迫ったため、当日の仕事をやらせれば教えるを解放してもらう。

 

 そして大博打の日がやって来る。ロネガンは50万ドルをトランクに詰めて私設馬券売り場にやって来た。ニセの情報は、第三レースのラッキーダンと電話で聞く。そこでロネガンは現金で単勝を購入した。ゴンドルフとフッカーはニンマリする。そこへゴンドルフに買収されたスナイダー刑事達が踏み込んできた。場内は騒然とする。逃げようとするフッカーとゴンドルフは、スナイダー刑事に銃殺された。ロネガンは呆気にとられ、50万ドルに未練を残しながら他の刑事に促されて場外連れて行かれる。

 

 結局、一連の騒動はすべてゴンドルフが緻密に仕組んだ大芝居だった。ニューヨークの元締めロネガンはまんまと50万ドルをゴンドルフ一味にかすめ取られ、フッカーはルーサーの復讐をしたのだった。

 

 感想など
米国の1930年代は不況で治安は乱れ、特にシカゴの町は暴力団が競い合い熾烈な抗争が頻繁に起こっていた。そんな環境の中で生き抜いた詐欺師達の物語である。当然、詐欺は犯罪であり、看過できない事件であるが、悪辣な連中同士が、考え抜いたトリックを使ってどんでん返しに相手を騙すという筋書きは面白く、犯罪行為が娯楽作品として成功しいる

 

 最近、特殊詐欺が横行し話題になっているが、その被害額の大きさに驚く。日本人は人を信じることを美徳としているから、そこに遠因が潜んでいるのかもしれない。また地面師が暗躍して大手不動産会社が55億円もの大金の詐欺に遭っている。東京五反田の老舗旅館の土地所有者(本人は高齢で入院中)「なりすました男女」を雇い、本人の免許証・旅券・印鑑証明を偽造して、ブローカーや司法書士、弁護士など善意の第三者まで巻き込んでの大芝居である。なお、事件の首謀者は外国に高跳びしているというから悪知恵に長けた人物であることは間違いなく社会悪として糾弾すべき事件である。

 

 ただ、この映画はそういう犯罪詐欺を肯定・賛美ではなく、また糾弾するものでもないので、単なる娯楽として割り切って眺めたい。さらに被害者もずる賢い犯罪組織であるし、出てくる警察も脅しで金をせびる悪徳警官だからみんな同情を挟む余地がない。見ている側に「ザマを見ろ」という感覚さえ抱かせる。いわば悪商人や悪代官をやっつける鼠小僧のような義賊的な親近感すら抱かせる。

 

 悪徳警官の脅しには、ニセ札を払って対抗。イカサマのポーカー賭博では双方が対抗する。どちらもずる賢くインチキにはインチキで挑む狐と狸の騙し合いなのだ。近年頻発する年寄りや女性こどもなどの弱い者いじめのような詐欺でないところがミソである。主人公達は、詐欺犯として逃亡中の身だ。ラストは、大ボスをカモにした大博打のイカサマなのだがそこにFBIや警察が絡んで来て、どんでん返しが起こるというもの。音楽が静かで逆にサスペンスとユーモア性を高めている。

 

時代劇映画ではサイコロを使う丁半バクチだ。サイコロに仕掛けをして賽の目をインチキする。座頭市では、壺振りのサイコロを懐から転がり出してインチキする。洋の東西を問わず人はインチキが好きだ。時々、ヤフーの囲碁ゲームをやっているが、こんな遊びでも不正をしてでも勝ちたい奴がいるので驚く。

 

最後に、穿った見方をすると、こういう映画を見て思うことは、映画こそ最大の詐欺ということだ。有りもしない出鱈目を、監督が指導して、役者が演技して、撮影スタッフが一致協力して嘘を作り上げる。それを観客に見せて、はらはらさせたり、泣かせたり笑わせたりする。これは観客への詐欺行為でもある。観客は詐欺の被害者だ。面白いことに観客はお金を払い騙されながら映画を見て喜んでいる。(

 

GALLERY
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タイトル            運び屋の上納金を詐欺るルーサーとフッカーイメージ 2 イメージ 3
1万1千ドルをだまし取った    しかし、ルーサーは元締めに殺されるイメージ 4 イメージ 5
ルーサーの親友ゴンドルフに仕返しを頼むフッカー殺したロネガンの情報を集めるイメージ 6 イメージ 7
ロネガンにポーカー賭博を挑戦しようと決める 私設場外馬券場を仮設するイメージ 8 イメージ 9
ゴンドルフはロネガンとポーカー賭博をする ロネガンから1万5千ドル巻き上げるイメージ 10 イメージ 11
フッカーは競馬で儲けないかとロネガンを誘う 試しにやらせてもうけさせるイメージ 12 イメージ 13
ニセ情報があるとカマにかけ FBIがゴンドルフを捕まえようとしていると知らされるイメージ 14 イメージ 15
ロネガンは策に引っかかる       馬券場に刑事たちが手入れに入るイメージ 16 イメージ 17
ゴンドルフは刑事を味方に付けた大芝居だった ロネガンの大金をだまし取った二人