ノッティングヒルの恋人(ロジャー・ミッシェル監督1999年作品)
「忘れないで、私も一人の女よ。好きな男に
愛してほしいと願っているわ。」
(「ノッティングヒルの恋人」からアナ・スコットの言葉 )
あらすじ
ロンドンの一角にあるノッティングヒルという街。そこで旅行書専門店を営むウイリアム・タッカー(ヒュー・グランド)は、妻に逃げられてから友人スパイク(リス・エバンス)と同居している。店舗は別にあり徒歩で通勤する。誠実過ぎて商売っ気なしのため経営は赤字続きである。マーティン(ジェームス・ドレイファス)という店員を雇っている。
ある日、米国の名女優のアナ・スコット(ジュリア・ロバーツ)が店に現れた。ウイリアムが誠実に応対したのでアナは本を買う。その後、ウイリアムがジュースを買いに街に出た際、折しも歩いていたアナと衝突し、アナの衣服を汚してしまう。恐縮したウイリアムは自宅に招き入れ、服の洗濯をする。感謝したアナはウイリアムにキスをして帰った。
後日、アナからウイリアムに電話があったが代理のスパイクが忘れていて数日後知る。慌てて滞在のホテルに電話をしたが、分刻みの予定があるらしく、日時を指定されてホテルに出向く。そこは雑誌記者のインタビュー場所だった。マネージャーが同席したり、離れたりの面会は5分間で、まともな話は出来ない。しかし、最後にその夜予定していた妹ハーニ―の誕生会にアナが来ると約束できた。
誕生会はウイリアムの友人マックス(ティイム・マキナニー)夫妻の家でやるのだ。妹ハーニ―(エマ・チャンバーズ)や友人バーニー(ヒュー・ボネビル)等が集まった。そこへウイリアムとアナがやって来た。ハーニ―はアナを有名女優と知っていて感激する。バーニーも後から分かり驚く。誕生会に来たアナは、妹や友人達と仲良くなり、その後もデートを重ねる。
そんな中、ウイリアムがアナのホテルを訪ねた時、そこにアナの恋人がいて衝撃を受ける。アナもその恋人を邪険に扱えない様子だったため、もう終わりだとそこを立ち去る。アナのところへ恋人が訪ねていたことは新聞に報道されていた。マックスやバーニー達はウイリアムに別の恋人を推薦するがその気になれない。ある日、アナのヌード写真が流出して新聞に書きたてられた。
数日後、突然アナがウイリアムの自宅にやって来て、マスコミから逃れたいので匿ってくれとやって来た。アナの恋人の件も決着しており、お互いが理解し合えて同棲しようとした途端、スパイクの軽口がマスコミに漏れ、ウイリアムの自宅前に記者たちが殺到する。そのため、アナは怒って立ち去り、その後も女優として活躍、オスカーも手にする。
半年間、失意の日々を送るウイリアムにマックスが、アナが英国に撮影に来ていると知らせる。ウイリアムは行く。会えたがアナの言葉を誤解して立ち去る。翌日、ウイリアムの店にアナがシャガールの絵を持参して訪ねた。ウイリアムは「僕はノッティングヒルの住人で、君はビバリーヒルズの住人。住む世界が違う。」とアナに言う。アナは「忘れないで、私も一人の女よ。好きな男に愛してほしいと願っているわ。さようなら」と立ち去る。
その話をハーニ―、マックス夫妻、バーニー等に話す。当初はみな頷いていたが、スパイクだけが「お前は大馬鹿だ。」と詰った。それを聞きいたウイリアムは、アナの言葉を噛みしめて大変な勘違いだと思い直す。みんなは慌てて、ウイリアムをアナに会わせようと車でアナの居るホテルへ直行する。
ホテルではアナの記者会見が始まっていた。記者から「以前、撮られていた男性との関係は?」「友達です」その次の質問は、記者を装ってウイリアムが訊ねる。「彼が反省していたらチャンスはありますか」するとアナは「そうするわ」と答えた。そして「いつまでもロンドンに滞在するわ」と言って一転婚約発表となり、アナはウイリアムとノッティングヒルに住むこととなる。
感想など
アメリカの有名女優が、ロンドンのしがない本屋の店主と偶然出会い、そこから恋愛に発展し結ばれると言うラブストーリーである。登場人物の誠実でありながら、どこか抜けている行動、直ぐにバレる下手な取り繕い、嘘っぽいが本音のような会話のやりとりが面白い。コメディ仕立てで、夢の世界に誘ってくれるような作品。
妻に逃げられたしがない男に、有名女優が惚れるという「蓼食う虫も好き好き」の諺通りの展開である。逃げた妻は、多分誠実過ぎてうだつの上がらない男を見限ったのだろう。一方、女優の方はうだつは上がらなくとも誠実で優しい男に好意を抱いたと思われる。女性達それぞれは目指すものが違うというひとつの表れなのだろうか。
「プリティ・ウーマン」という映画で、ジュリア・ロバーツは、娼婦から富豪夫人に出世するシンデレラ嬢を演じていた。こちらは、有名大女優のジュリア・ロバーツがしがない本屋のバツイチと相思相愛になり結ばれると言う、男女が入れ替わったシンデレラマンの物語となった。恋愛結婚というものが、その人の人生にとっていかに意味があるかを示している。
御多分に漏れず、有名人であるアナは、マスコミの注目の的である。大女優の行動は、プライバシーでさえも世間に晒され、いろいろな憶測や誤解や間違った情報も多々ある。世間では、女優は娼婦と紙一重とか好き者などとの噂もある。そんな間違った情報にムキになって抗議する主人公の姿に、誠実さが満ちている。誤解や間違った情報を乗り越えて、その愛が成就することは、実にお正月と共にお目出度い。ラストはエルヴィス・コステロの歌う「She-忘れじの面影」がバックに流れる。
そして、次は夫婦生活、仕事、子育て、老後へとステージが変わって行く。お目出度さがそのまま続いて行くことを祈りつつ見終わる。
この映画のメイン曲は、エルヴィス・コステロの歌う「She-忘れじの面影」
である。元々は1974年にシャンソン歌手、シャルル・アズナブールが発表したものをこの映画はカバーしたものだ。(一節を紹介すると・・・)
https://youtu.be/LRxVkt9Eg9o (聞けます)
彼女 ♪~
忘れることのできないこの面影
きらめく残像 それとも悔恨
僕の宝物 それともつぐない
(中略)
僕の人生は彼女がいるからこそ♪
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